覚書

知られていない人や作品を紹介したいです。

岡田三郎「文藝時評」『新潮』昭和

 衣卷省三氏の「黄昏學校」も、私には見馴れた文學の世界である。私のやうな荒らくれた人間世界を小説でほじくりかへしてゐるやうな人間には、衣卷氏の小説はまるで裏がへしの世界のやうにも見られるが、押しをつよく言へば、かういふ小説の世界は、とうの昔に素通りをして来たとも言へないことはない。