覚書

知られていない人や作品を紹介したいです。

2014-03-24から1日間の記事一覧

村木竹夫「衣巻省三、北川冬彦、安西冬衛三氏のグリンプス」『ファンタジア』第二輯 昭和

衣卷省三 「毀れた街」は「毀した街」だ(タルホ氏) 省三氏の詩は「薔薇と泪とあれと」である。僕はいつも思つてゐる。衣卷自身がいろんな色彩と匂ひの詩を持つて歩いてゐると。 (モオニングにラツパズボン) 省三の詩は空気の匂ひがする。いつも孤独のエ…

伊藤整「數個のエスプリに就て」『FANTASIA』第三輯

★衣卷省三 4 現象のすべてをエスプリに歸納させるのが彼の秘密だ。 5 エスプリの秩序のための現實の解體作業。 9 彼が笑ふ時はひとつ見付けた時だ。なにか素晴らしいことを。

川端康成「同人雑誌の作品『池のほとり』其他」『時事新報』八月三日

最も特色のあるのは、一戸務氏の「春をおくる人々」(新作家)、衣巻省三氏の「落ちたスプウン」(新作家)、阪本越郎、北園克衛両氏の合作の「ムツシユシヤアレ珈琲店」(新作家)なぞである。(中略) 衣巻省三、北園克衛の二詩人の小説は、一般の小説の読…

左川ちか「衣卷さんと詩集『足風琴』」昭和九年十一月一日『椎の木』第三年第十一号

村野四郎「詩集『足風琴』衣卷省三氏著」『詩法』

衣卷氏の詩を讀むことは僕にとつて非常に久し振りだ。あの屈托のない詩集『こわれた街』以來のことだ。 彼の詩のお行儀の惡さは昔ながらのものだが、詩が赤いネクタイをつけて、ちよっとはにかんでゐるところも衣卷氏の儀禮なのである。概して『足風琴』は非…

伊藤整「文藝レビユー七月號(その他)」『文藝レビユー』p57―58

衣卷省三「パラピンの聖母」 彼の久し振りの創作である。そしてそれは僕等の期待を裏切らず、がつちりとした構成とインサニテイを取り扱ふ一つの新しい方法とを掲げて現はれた。主人公の芝道夫の言葉の記述を作品の主體としたことは、最近の世界文學の有力な…

谷崎精二「文藝時評」『早稲田文學』昭和10・11・1

衣卷省三氏の『黄昏學校』には獨身な女教師の生活が描き出されてゐる。暢達な筆致だが、彼の女の生活の上面を撫でゝゐるだけで、作者の神經は作品から遊離してゐる感じがする。現實への切り込み方が不足である。

井上幸次郎「文藝時評」昭和11・6・1『早稲田文學』

「仲人氣取」(衣卷省三氏)は、此の作者に珍しく調子が低い。それに冗漫である。一寸面白い人間も出て來るが……。

岡田三郎「文藝時評」『新潮』昭和

衣卷省三氏の「黄昏學校」も、私には見馴れた文學の世界である。私のやうな荒らくれた人間世界を小説でほじくりかへしてゐるやうな人間には、衣卷氏の小説はまるで裏がへしの世界のやうにも見られるが、押しをつよく言へば、かういふ小説の世界は、とうの昔…

編輯後記(近重憲太郎?)『翰林』s8・9・1 第一巻第二号

新秋の風に托して第二號を送る。小説欄は寂しいが、書く筈だつた秋澤三郎は愛妻の獨立展制作の監督、衣卷省三は東京灣ヨツト周航、近藤一郎は珍らしく社會見學のための新聞社づとめ、岩下明男はデリケエトなからだを暑氣にやられて等々の理由で原稿ができな…

福田清人「新刊批評 三册の小説」(『翰林』s8・9・1)

衣卷君の建設する特異な現實の城郭の掘はわれ等の越そえないものがある。君と室を共にする時、たまたま長身の男の扉を排して入来するや「あつ天井が下つた」と驚かせ、一杯の清水を汲まうと吸上ポンプを力をこめておすと、「そんなに力を入れると井戸もろと…