黄昏の鐘の音がしみわたつている
あの枯芝をいだくように
垂れている 水仙の葉にも
あなたの息子はと言えば
あんなに雪が囁きかけている
今宵 ふと讃美歌をうたう
母の刺繍の針にも肖た
光が またもつき刺さつてくる
ぼくの疾む脳髓を軋りながら
坂をのぼつてゆくリヤカーの
柩の中にみちあふれていた
室咲きの花々がのこしていつた
足あとがいきいきと匂つてくる
この凍てついた牢屋(ひとや)のともしびを
白い突風が 一瞬 消していつた
雪の虚空に まだ揺れているような
老いた祈りの手よ
人見勇詩集『襤褸聖母』より