覚書

知られていない人や作品を紹介したいです。

白昼夢

ゆるされた
光の涯をみつめながら
流木の罠の中に疾んでいる

くらげは 今日も漂う

重油に喘ぎあえぎ
浮標にさみしく語つている
丘の白百合の聖歌に送られて
船出のテープにもひらひらゆれる
――善意を信じるかなしみについて

ああ
そんな ひとときも
あかるく ぐんぐん伸びてゆく
雲の峰に憑かれたように

くらげの幻想のように

紺碧の水平線へ
見えない世界の額縁をかついでゆく
にんげんよ
にんげんよ

人見勇詩集『襤褸聖母』より