2014-10-24 冬の夜のダイビング ゆうべ ぼくは 疾む世界を脱けだし 凍える雲の飛込板佇つていたしきりに 血尿を放つ涸れたプールの底には 共同墓地の 白い十字架の影が刻まれて――いつか銹びついたまま胸につき刺さる弾丸を するするかすめては 堕ちてゆく 小さい落日のひかり重たげな空気の翅とある 屍室の鍵穴を訪う 殉教徒のまなざしに肖た 水仙の祈りの手よ ああ遠い 雪の荒野に なおも昏れのこつている 犯したぼくの手よ神の銃眼をまさぐりながら人見勇詩集『襤褸聖母』より