――すでに この邦の太陽もひびわれている
のであろうか
ああ あんなに手招きしている 自殺した
友の白い額縁にめくるめく 誰もうたわない
灼けただれた砂の海に 喀きつくした葡萄
酒の壜がただよう 僕の胸には いまもなお
銹びついた神の銃弾がつき刺つている
み給え
鮮やかに リルケの薔薇の蜜蜂を噛みつく
す 蟷螂の斧にも肖た おびただしい俘虜の
影を轢き うそ寒い僕の死へのレールが ま
るで 沙漠の魔法にかかつたように 世界終
焉の蜃気樓をつらぬき あのマサビエルの奇
蹟の噴泉につづいてゆくではないか
こわい こわい
泥まみれの聖処女バーナデツトの跪くこえ
人見勇詩集『襤褸聖母』より